年金を 増やしてさらに 節税も
こんにちは。FPのみかりこです。
最近よく耳にする「若者の〇〇離れ」という言葉。この〇〇には「酒」とか「車」とか「ブランド」が入ったり‥。「果物」なんかもありました。その背景には、あまりお金を使いたくないという心理があるんじゃないかと思うのですが、なぜお金を使いたくないのかと言えば、20代の若者が「老後の不安」と答えていました。
電車の中吊り広告などでも「貧困」とか「老後破産」とか「下流老人」などの文字が躍っていたりと、あまり想像したくない未来の話ばかりです。
私も氷河期世代で、社会人になってから景気のいい話にほとんど接したことがないのに、これ以上悪くなると言われたら、「安楽死を合法化しよう!」なんて言いたくもなるわけです。
‥と、前置きが長くなってしまいましたが、今日は「老後の不安を解消するには」というお題目の第一弾として、年金の話をしようと思います。
皆さん、「ねんきん定期便」もらいましたか?
年1回、誕生月に国民年金と厚生年金の加入記録のはがきが送られてきますが、35歳、45歳、59歳の人には特別に封書で詳しい内容のものが送られてきます。これを見て、年金支給時にいくらもらえるのかが試算できます。
ねんきん定期便が手元にない人は、日本年金機構のHP「ねんきんネット」でも試算ができます。
びっくりするほど少ないと感じたか、あるいは最初から期待していなければ、想像どおりだったかもしれませんね。この額が一年分と思うとやりきれないという人は多いんじゃないかと思います。
では、どうしたらいいのか。
まずはもらえる年金を増やすことを考えてみたいと思います。
※厚生年金をもらえる人は、年金額に関して恵まれている人なので、ここでは、国民年金第1号被保険者(自営業者や個人事業主など)が上乗せできる制度を主に紹介します。
1.繰り下げ支給で以後の年金額アップ
年金をもらえる時期を先延ばしにすることで、ひと月あたり0.7%増額されます。(上限60月)
たとえば、65歳から受給開始される場合、66歳から受給に繰り下げると
0.7%×12か月=8.4%UP
基礎年金の満額を78万円とすると
78万円×8.4%=6.552万円
約84万5千円もらえる計算です。
この繰り下げ受給のメリットは、この増額された金額を以後ずっともらえるという点です。
上限の60月(5年)繰り下げたら、42%UPです。以後、死ぬまでずっと32万7千円プラスされるというわけです。
ただ、自分が長生きするとわかっている人であればいいですが、繰り下げてすぐに世を去ったとなれば、逆に繰り上げておけばよかったとなる話です。(同様に繰り上げ受給もできます。月0.5%減額される)
2.付加年金で年金額を上乗せする
付加年金とは、月額400円保険料を多く収めると、将来、200円×収めた月数分、年金が多くもらえるというものです。
たとえば、40歳から20年間400円の付加保険料を払っていたとしたら、4万8千円年金額が増える計算になります。上乗せして払った総額は9万6千円なので、2年で元が取れると思うととてもお得に感じます。
3.国民年金基金で年金額を上乗せする
これは、国民年金第1号被保険者の、言わば二階建て部分です。「地域型」と「職能型」があり、地域型はその地域に居住している人、職能型は弁護士や医師、税理士など、その職業に従事している人だけが入ることができます。口数制になっており、一口目は終身年金、二口目以降は終身年金、確定年金、自由に選ぶことができます。
メリットとしては、
デメリットは
- 一度加入すると途中で脱退できない(会社員(第2号被保険者)になれば可能)
- 物価スライドに対応していない
この物価スライドに対応していないというのは、付加年金も、次に紹介する確定拠出年金も同じです。
受給時インフレになって物価が上がっていれば、年金の価値は下がってしまいます。
こうした物価の変動に対応しているのが、公的年金(国民年金、厚生年金)ですが、近年の被保険者数の減少と平均寿命の延びを考慮して、給付水準を調整する「マクロ経済スライド」の導入によって、物価や賃金の上昇ほどには年金額が増えない仕組みになっています。
※付加年金と国民年金基金はいずれか一方にしか加入することができません。
4.個人型確定拠出年金で年金額を上乗せする
これも国民年金基金同様、第1号被保険者の二階建て部分となります。ただし、国民年金基金と合わせて68000円が掛け金の上限になります。
平成29年1月から、今までは加入できなかった専業主婦(第3号被保険者)や公務員が加入できるようになりました。
「iDeCo(イデコ)」という愛称も付けられ、今後もっと注目されるでしょう。
国民年金基金と大きく違うところは自分で掛け金を運用できることです。国民年金基金は加入時点で年金額が確定しますが、確定拠出年金は運用次第なので、もらう時まで金額がわかりません。
メリットとデメリットは国民年金基金とほぼ同じです。
※掛け金は小規模企業共済等掛金控除となる。
※企業年金がある会社に勤務した時に脱退となる。企業型確定拠出年金がある会社の場合、引っ越しが可能。
5.民間の「個人年金保険」で年金額を増やす
税制面では、上記の年金には敵わないので、二階建て部分の年金を付けてもまだ足りないといった場合に検討してみるとよいでしょう。上記年金ほどではないにしろ、個人年金保険料控除が受けられ、最大で所得税が4万円、住民税が2万8千円控除できます。
保険料の払込金額に対する年金の受取額の割合「返戻率」が高いものをセレクトするとよいでしょう。早くから始めていれば返戻率120%以上の商品もあります。しかし、途中で解約する事態になった時に元本を割り込む可能性もあるので、無理のない範囲で始めることが大切です。
まとめ
この「年金を増やす」ということに拘らなくても、その分貯金をしていればいいように思いますが、この二つの大きな違いは、年金を増やすと節税効果があることです。貯金では所得税控除はできません。
たとえば、個人年金保険料控除であれば
所得税4万円の控除で、所得税率が20%(所得が330万円超 695万円以下)の人であれば、8,000円所得税が安くなります。
住民税2万8千円の控除で、住民税率は一律10%なので、2,800円住民税が安くなります。
合計10,800円の節税となります。
これは一年間なので、仮に30年間個人年金保険に入っていたら、324,000円の節税効果があったことになります。
年10万円の払い込みで返戻率が120%の商品であれば、節税分を引いた実質的な払い込み額は89,200円になるので、
年金総額3,600,000円(10万円×30年×120%)÷保険料総額2,676,000円=1.3452‥
実質134.5%の返戻率となります。これを年利にしてみると単利で1.15%、1年複利にすると0.9936%になります。現在の預貯金の金利が0.1%程度なので、それに比べれば良いように思います。ただ、期間の長さを考えると、他にもっと利率のいい商品がまだまだありそうです。‥が、その話はまた別の機会に。