お金の勉強をするブログ

1級ファイナンシャル・プランニング技能士。CFP。お金の知識をわかりやすく伝えることを目標に、記事を書いていきます。

離婚する 前にお金の 話する

こんにちは。FPのみかりこです。

今日はちょっとシビアなお話を。離婚とお金についてです。どこの夫婦でも一度くらいは「離婚してやる!」と思ったことがあるはず。元々赤の他人が一緒に暮らすわけですから、不満がないはずありません。とはいえ、なかなか実際に行動に移すまではいかず、日々の忙しさにそんな気持ちも忘れていき、普段の生活を続け、そしてまた、何かのきっかけで再燃‥みたいなことを繰り返して結婚生活をなんだかんだ続けている夫婦は結構いるんじゃないでしょうか。

離婚という感情が支配するものに対して、金銭面の問題は理性が働きます。ここで、結婚生活10年の子供が2人いる夫婦が離婚した場合のお金の問題を見ていこうと思います。

 

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<モデルケース>

45歳(年収700万円)

42歳(専業主婦。結婚前は10年間会社勤め(年収300万円)をしていた)

子供2人(8歳と5歳)

結婚11年目(婚姻期間10年)に離婚

 

まず、離婚に伴うお金は3つあります。

 

1.慰謝料

これは離婚原因で変わってきます。意味を辞書で調べると「生命・身体・自由・名誉・貞操などが不法に侵害された場合の、精神的損害に対する損害賠償金」とあるように、とらえ方でだいぶ違ってきますし、そもそも精神的損害をお金という数値に置き換えるのは非常に難しいものです。明らかな浮気とか、暴力であっても、相手が払える額の範囲内なので、ハリウッドスターや歌手などが何億円もの慰謝料を払って離婚した、なんてニュースを聞くことはあっても、一般人が払える慰謝料なんて多くても数百万、たかだか数十万というのもざらです。

 

2.養育費

親権があるなしに関わらず、夫婦が分担するのが原則です。通常は収入が多い側が、養育する側に払うもので、金額は相談して決めます。

裁判所のHP裁判所|養育費算定表

というものがあるので、これで相場がわかります。 

ちなみに上記モデルケースの場合は10万円~12万円となります。これは妻が専業主婦なので、金額が多く見積もられますが、収入のある妻の場合はその分少なくなります。(こうなると、養育費を取り決めるまでは専業主婦でいたほうがいいようですね)

ここで重要なのが、この取り決めを必ず法的に効力のある公正証書で行うことです。厚生労働省の調査によると実際に養育費が払われているのはケースは全体の2割程度となっています。離婚後、後悔しないためにも、公正証書強制執行認諾条項を入れておけば、給料を差し押さえて(天引きで)養育費を支払わせることができます。

 

3.財産分与

婚姻中に築いた財産は夫婦共有の財産であるという名目のもと、妻が専業主婦であっても、財産の半分をもらう権利があります。どこまでを夫婦共有の財産とするかはなかなか難しい問題で、たとえば、家を建てるためにお互いの両親が出した頭金は婚姻中に築いた財産ではないため、分割の対象にはなりません。また申告制なので、いろいろと抜け道があるのが現状のようです。

年金分割もこれにあたります。専業主婦の場合、夫がもらえる老齢厚生年金には内助の功として半分もらう権利があるという主旨のもと、老齢厚生年金(2階建て部分)を婚姻期間の割合をかけて、その半分を受け取れるというものです。但し、これは公的年金にだけ当てはまり、企業年金などの上乗せ部分(3階建て部分)の年金は分割されません。

モデルケースの場合、分かれた妻は年金をいくらもらえるのでしょう。簡易的に計算してみます。

夫の老齢厚生年金=年収×5.481/1000×加入年数

700万円×5.481/1000×10年=383,670

5.481は生年月日ごとの乗率

この半分がもらえるので191,835

妻の老齢厚生年金=300万円×5.481/1000×10年=164,430

妻の老齢基礎年金=779,300円(満額とする)

合計1,135,565

増えたのは19万円、月にすると僅か15,800円程度です。

 

離婚をしなければ夫婦でいくらもらえたでしょう。

仮に夫が40年間厚生年金に加入していたとしたら、1,534,680

夫の老齢基礎年金が779,300

妻の老齢厚生年金と老齢基礎年金が943,730

合計3,257,710

さらに20年以上の厚生年金の加入期間があると、夫が65歳になって老齢厚生年金を受け取る際に、65歳未満の妻がいる場合、扶養手当にあたる加給年金が加算されます。平成29年度の額だと389,800となります。これは妻が65歳になって老齢年金を受け取るようになっても、振替加算として一部が加算されます(※)。

※昭和41年4月2日以後に生まれた人には加算はありません。

この加給年金も加算すると3,647,510となります。

 

ひとりで月95千円程度で暮らすのと、ふたりで月304千円で暮らすのは果たしてどちらがいいのでしょうか。

 

これは単純にお金で決められるものではありませんが、感情の問題にいくらか理性が働く数字じゃないでしょうか。

とはいえ、顔も見たくないような人と一緒にいるくらいなら、少ない年金でもひとりで暮らしたほうがまし!という人には、離婚を躊躇する必要はありません。

最後にダメ押しでもう一つ。

離婚せずに夫が亡くなった場合、残された妻には遺族厚生年金が支給されます。これは報酬比例(※厚生年金の2階建て部分)の3/4がもらえるので、モデルケースで言えば、1,151,010になります。ただ、妻には自身が老齢厚生年金ももらえるので、そこは差額支給となります。ちょっとややこしいのですが、A(夫の遺族厚生年金の3/4)とB(夫の遺族厚生年金の2/3と自身の老齢厚生年金の1/2を足した額)のどちらか多い方が支給される厚生年金の額となります。このケースではAの方が多いので、これに妻の老齢基礎年金を足した1,930,310が支給される年金額になります。ひとりで月16万円ちょっとで暮らせます。相手がかなり年上なら、離婚よりも・・と、言いたくなりますが、こういった損得を考えるのも、冷静になれていいのかもしれませんね。